年頭所感

集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の実現を

特定非営利活動法人 消費者機構日本
理事長 芳賀 唯史

 2011年、日本は東日本大震災という大変な災禍に見舞われました。あらためて犠牲者の皆様に哀悼の意を表すとともに、震災後の原発事故を含め、多くの被災(害)者の皆様にお見舞い申し上げます。

 2012年は、震災からの復興を軌道にのせるとともに、原発事故の被害補償や放射性物質の除染、事故をふまえての新たなエネルギー政策の構築といった、国民的課題を解決していく年としなければなりません。

 消費者契約被害をめぐっては、詐欺的な投資商法被害が高齢者を中心に増加し、被害金額も大きくなっています。消費者庁は、消費者安全法の改正で重大な財産事案への対応を強める方針です。法改正とともに、消費者庁や地方自治体による行政指導が効果的におこなわれるような体制整備が焦眉の課題です。

 私ども消費者機構日本は、適格消費者団体として、消費者被害の拡大防止のための活動をすすめてきました。不動産賃貸借に係る差止請求訴訟や留学あっせん事業者に対する差止請求訴訟により、約款が一定の改善をされています。その他、裁判にまで至らずに約款や広告・表示等が是正された事案が2011年には4件ありました。他の適格消費者団体でも取り組みがすすめられ、消費者団体訴訟制度は着実に成果を上げています。

 しかし、消費者団体訴訟制度では、不当な事業者の行為に対して差止を求めることはできても、それまでに生じた被害を救済することはできません。

 消費者被害は被害額が少額(数万から百数十万)のものが多く、訴訟を提起すると費用倒れになります。被害額が高額に及ぶ事案でも、労力を考えると、個人が訴訟提起して被害回復をはかることには困難が伴います。

 そこで、消費者が有する法的請求権の実効性を確保するため、新たな訴訟制度の案が消費者庁において準備されています。この制度案は、共通争点を有し多数発生している消費者被害を対象とし、主体を特定適格消費者団体に限定。訴訟手続きを二段階に区分し、一段階目の訴訟で共通争点の審理を行い事業者の法的責任が認められた場合に、二段階目で個々の被害者が参加し簡易な手続きで被害額を確定し被害回復をはかる仕組みです。被害者は、事業者の法的責任が確定した段階で、適格消費者団体からの通知等に応じ被害回復を申し出ることで救済への道が開かれるという、消費者にとって労力の面でも費用の面でも負担が軽減される画期的な制度です。

 2012年はこの制度を実現するために、広範な消費者団体と協力して、国会への働きかけを強めるとともに、同制度の担い手となれるよう、組織財政基盤の整備・強化を図っていく所存です。