消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

お知らせ

賃貸借契約 賃借物件の原状回復に関する考え方(1)

 「消費生活年報2009」(独立行政法人国民生活センター編)によれば、2008年度に全国の消費生活センターが受け付け、PIO-NETに登録された消費生活相談情報の総件数は938,720件で、うち「賃貸アパート・マンション」に関する相談件数は、5番目に多い33,493件でした。相談の特徴等については、敷金の返還や原状回復等、退去時のトラブルが目立つとの報告がされています。

 今回は原状回復の考え方について情報提供します。

ポイント
自然損耗・通常損耗の費用は貸主負担。故意・過失による汚損・損耗の費用は借主負担。

 借主が賃貸アパート等を退去する際には、賃貸物件を原状に回復して借主に返す義務がありますが、この原状回復を行うための費用をめぐって貸主と借主間でトラブルが数多く起きています。

 民法上、貸主が賃借物件を退去する際には、借主は現状のまま貸主に返還すればよいとされています。(民法第483条)

 しかし、その場合であっても、借主の故意・過失、通常の使用をしなかったことによる賃借物件の汚損、破損については、借主が原状回復費用を負担するのが一般的です。

 例えば、クーラーの故障による水濡れ等で汚れやカビが発生し、拡大してしまった場合のように、注意を怠ったり修繕が必要なのに貸主に知らせなかったりしたために損害が大きくなったときの費用は借主の負担となります。

 一方、自然損耗や経年変化、通常損耗による汚損、破損については貸主の負担となります。

 例えば、居室に家具を置けば床や畳、カーペットが重さでへこむことがあります。日差しによってフローリングや畳が日焼けすることもあります。また、テレビや冷蔵庫等の後ろは、電気焼けしてしまうこともありますが、これらは普通の生活をしていれば発生する損耗ですので、貸主の負担となるのが一般的です。

 よって、 賃貸契約書に「自然損耗や経年変化や通常損耗でも原状回復の費用は借主の負担となる」となるという条項があれば、不当条項となります。

 詳細な原状回復の考え方については、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」をご参考ください。