消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

イベント等

第21回消費者志向経営セミナー
「法施行まであとわずか!消費者裁判手続特例法を学ぶ」開催報告

 当機構では、2月17日(水)午後に「法施行まであとわずか!消費者裁判手続特例法を学ぶ」と題した第21回消費者志向経営セミナーを開催いたしました。

 2016年10月1日から、消費者裁判手続特例法が施行され、新しい消費者被害回復訴訟制度が始まります。この制度は、法施行後に締結した消費者契約のトラブルや消費者契約に関する法施行後の不法行為により、同じ原因で多数の被害が出た場合に、被害者の代わりに消費者団体が事業者に対して、金銭的な被害回復訴訟を提起できるものです。

 消費者裁判手続特例法の内容およびこの制度の実務的な流れなどについて、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員である弁護士本間紀子氏から解説を受けました。

1.テーマ
消費者裁判手続特例法を学ぶ
2.日時
2016年2月17日(水)
13時00分~15時00分(受付 12:40~ )
3.会場
主婦会館プラザエフ 5階会議室
4.参加費
6,000円
5.対象者
企業・団体の法務・コンプライアンス・顧客対応・消費者契約部門の担当者、法律専門家
6.参加者
14名

7.タイムスケジュール

時 間 内 容 講師・対応者
13:00~14:30 〇集団的消費者被害回復訴訟制度の詳細
(消費者裁判手続特例法の構成概略含む)
〇消費者被害回復訴訟の対象となりうる事例紹介
〇消費者被害回復訴訟の流れ(想定事例をもとに)
〇特定適格消費者団体の役割 など
弁護士
本間 紀子 氏
(日本弁護士連合会 
消費者問題対策委員会委員、
消費者機構日本 専門委員)
14:30~14:40 休憩時間  
14:40~15:00 質疑応答 弁護士
本間 紀子 氏
消費者機構日本
専務理事 磯辺 浩一

8.講義内容

 講義では、消費者裁判手続特例法の制定に至るまでの検討経過や目的から入り、消費者被害回復訴訟制度の対象、要件、訴訟手続の流れなどが説明されました。

 次に第1段階目の共通義務確認訴訟に関し、特定適格消費者団体が原告となって提訴することや、個別の訴訟との違い、対象となる請求が限定されていること等について条文に従って解説があり、あわせて想定される事例も例示されました。この訴訟における判決の効力が、他の特定適格消費者団体に及ぶこと、諸外国における類似の訴訟では和解での解決が多いことなども紹介されました。

 第2段階目の簡易確定手続については、手続きの流れが説明され、特定適格消費者団体による手続開始の申立て、通知公告、債権届出の手続きとともに、事業者による公表、事業者の情報開示義務等についても解説がなされました。

 最後に、学納金返還請求事件をモデルケースとして、第1段階目の訴訟提起と要件の検討、判決、第2段階目の簡易確定手続により消費者に金銭が返還されるまでが解説されました。この実務的な解説によって、受講者にも訴訟の具体的なイメージが伝わりました。

講義風景
講義風景
質疑応答
質疑応答

9.質疑応答

 参加者からは、主に以下の質問が出され、本間弁護士及び磯辺専務理事より各回答がなされました。

Q1.特定適格消費者団体がない地域に設立予定はあるか。
また、法施行時どれ位が認定される見込みか。
A1.適格消費者団体も、当初は2団体が認定され、徐々に増えて現在13団体に至っている。また、現在適格消費者団体がない地域では、適格消費者団体の設立に向けて準備されている地域もある。 特定適格消費者団体も当初は多くても5団体程度ではないかと予想している。
適格消費者団体も特定適格消費者団体も活動エリアは限定されていないため、それら団体がない地域の事案についても、取り扱うことはできる。
Q2.濫訴とはどういうものをいうのか。
A2.およそ請求が立たないと明らかなのに訴えるというような場合ではないか。
Q3.債権届出などの様式はどうなっているのか。
A3.最高裁判所で検討中と聞いている。いずれ何らかの形で提供されることになるのではないか。
Q4.消費者被害回復訴訟制度の場合、COJのホームページでの公表はどのようになるのか。
A4.当機構が特定適格消費者団体の認定を受けることができればという仮定の話となるが、消費者被害回復訴訟制度の場合は、判決確定から1か月以内に個々の消費者に参加してもらう簡易確定手続きの申立てをしなければならないこととされているので、第1段階の共通義務確認訴訟の判決が確定してから公表するというのではなく、共通義務確認訴訟を提起する段階からホームページに公表して、被害者と思われる消費者の皆様に情報を提供することになろうかと思う。

 今回のセミナー参加者からは、講義内容に対する評価が高く、「モデルケースを用いたり、説明も整理されていて、理解が深まった。」「資料も分かりやすいものだった。」「いつも質疑応答の時間があり、参加してよかったと思う。」などの感想をいただきました。