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イベント等

第23回消費者志向経営セミナー
「消費者法制の基礎セミナー」の開催報告

 当機構では、10月26日(水)午後に「消費者法制の基礎セミナー」と題した第23回消費者志向経営セミナーを開催いたしました。

 今回は、消費者機構日本の副理事長で弁護士の佐々木 幸孝先生を講師として、消費者法制の概要、消費者契約法等の解説、差止請求訴訟事例ならびに事業者として注意すべき点などについて学びました。

 また、同じく消費者機構日本の理事で消費生活相談員の大谷 聖子氏を講師として、消費生活相談員の業務、最近の相談の傾向と特徴、事業者への要望についてお話しいただきました。

1.テーマ
消費者法制の基礎を学ぶ
2.日時
2016年10月26日(水)
13時30分~17時00分(受付 13時~)
3.会場
主婦会館プラザエフ 5階会議室
4.参加費
お一人様 7,000円
5.対象者
企業・団体の法務部門、内部統制部門、コンプライアンス部門、顧客対応部門、消費者契約担当部門等の新任担当者、消費者法制の基礎を学習したい方
6.参加人数
20名

7.タイムスケジュールと内容

時 間 内 容
13:00~13:30 受付
13:30~13:35 開会挨拶、資料確認
13:35~16:20
適宜、休憩
講義1 消費者法制の基礎
講師:弁護士 佐々木 幸孝 氏
(東京弁護士会 消費者問題特別委員会委員 専修大学法科大学院客員教授)
〇消費者法制の概要
 消費者問題と消費者法の歴史 消費者法の種類
〇各法律の概要
 消費者基本法、消費者安全法、消費者契約法、特定商取引法、
 景品表示法、食品表示法
〇事業者として注意すべき点
 消費者団体訴訟制度(差止請求事例)
○質疑応答
16:20~16:30 休憩
16:30~17:00 講義2 消費生活相談の業務と事業者への要望
講師:消費生活相談員 大谷 聖子 氏
(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 消費者相談室副室長)
〇消費生活相談の業務とは
〇最近の消費生活相談の傾向と特徴
〇事業者への要望

8.講義内容

(1)講義1 消費者法制の基礎について
 消費者法制の概要として、消費者問題と消費者法の歴史、それぞれの法律の成り立ちとその時代の背景や特色を3つに区分(①消費者保護基本法の成立まで ②消費者基本法ができるまで ③消費者基本法の成立以降)して説明されました。また、消費者法の種類として、「基本法」「行政規制(業法)」「民事ルール(民事実体法)」の3つについて説明されました。

 その後、各法律の解説として、「消費者基本法」「消費者安全法」「消費者契約法」「特定商取引法」「景品表示法」「食品表示法」の6つの法律について、それぞれの法律の概要、位置づけ、立法目的、主な条文の解説と具体的な事例の紹介などが説明されました。また、「消費者契約法」と「特定商取引法」については、2016年の法律改正を受けて、新たに施行される内容についても詳細に言及がされました。特に「特定商取引法」では、取引類型ごとの違いが一覧化され、分りやすい内容となっていました。

【質疑応答】

Q.「消費者契約法」と「特定商取引法」については改正がされているが、積み残されている課題もあると聞いている。現状それらの積み残し課題の取り扱い状況はどのようになっているか。特に不招請勧誘の取り扱いはどうか。
A.積み残し課題に対する検討状況は、消費者契約法の専門調査会(消費者委員会)の検討が始まっているが、現状では検討項目の絞り込みまでには至っていない状況。不招請勧誘は前回の改正で一番議論された課題であったが、結局は業者側の強い反対もあり議論が進まなかった経過がある。そうした経過があるため、すぐ次の機会に議論するという状況にはないように思われる。
Q.消費者契約法の必要性の項目の中で、従来の業法や民法による消費者保護では限界があったが、消費者契約法では対応ができるようになった具体的な事例を教えてもらいたい。
A.事例で挙げた入学金・授業料の返還請求は消費者契約法9条1項ができたことによる成果である。
弁護士 佐々木 幸孝 氏
弁護士 佐々木 幸孝 氏
消費生活相談員 大谷 聖子 氏
消費生活相談員 大谷 聖子 氏

(2)講義2 消費生活相談の業務と事業者への要望について
 地方消費者行政の現況として、消費生活相談業務は消費者基本法、消費者安全法に基づいて地方公共団体の責務として行われていること、また全国の消費生活センターの設置数、PIO-NET端末の配備状況について説明がありました。

 次に、最近の消費生活相談の傾向と特徴の説明があり、その中では、2015年度の相談件数は2年ぶりに減少したが、架空請求に関する相談は前年度比で1.2倍増加していること、60歳以上の高齢者の相談は34.3%で依然として高い割合であること、情報通信分野の相談は2014年度に続き増加していること、還付金詐欺は2011年度から2015年度の5年間で10倍以上増加していること、通信販売に関する相談が増加し、全体の35%を占めていることなどの報告がありました。

 最後に、消費生活センターの斡旋率は全国平均で約10%、東京都では7%~8%であり、消費生活センターでは斡旋率のさらなる向上を目指しているとの報告がありました。

 今回のセミナー参加者からは、講義1、2共に「参考になった」との意見が多く、具体的には、講義1に関しては「消費者法制の歴史的背景から現状までが網羅されていて分りやすかった」「法改正の内容が理解できた」「具体的な事例について分りやすく説明いただき勉強になった」等のコメントがあり、講義2では「消費者相談の現状がよくわかりました」「相談員さんの生の考えが聞けて良かった」「斡旋率が10%ということは、やはり第三者が苦情に関わり解決していくことの難しさを感じた」といった感想をいただきました。

以上