消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

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第13回 通常総会・記念講演会 開催報告

 消費者機構日本は、6月5日(月)に第13回通常総会・記念講演会を開催しました。今年度の記念講演会は、「消費者裁判手続法~フランスの経験からみた活用法~」と題し、フランスの2段階訴訟制度の概要及び活用状況についてご紹介いただき、日本の制度活用に当たって参考にできる点について、北海道大学大学院法学研究科教授の町村泰貴様よりお話しいただきました。

 以下に、講演会の概要についてご報告いたします。

1.日 時
2017年6月5日(月) 18時40分~20時00分
2.会 場
主婦会館プラザエフ 7階「カトレア」
3.参加者
80名(事務局を含む)
4.次 第
 
講演テーマ「消費者裁判手続法~フランスの経験からみた活用法~」
講師 北海道大学大学院法学研究科教授
消費者支援ネット北海道 町村 泰貴 氏

講演概要

 

 日本の消費者裁判手続法のフランス版ともいえるアモン法は、日本の消費者裁判手続法と同時期に成立したが、日本と違って施行日以前の事案に適用されないという制約がないこともあり、既に9件の訴訟が提起されている。最終的に決着したのは1件(エレベーター監視システム費用の返還請求)で、事業者が直接、消費者10万人に20ユーロを返還することで和解している。次の家賃から相殺する形で返還し、認証消費者団体(日本でいう特定適格消費者団体)は履行状況を確認することで終了している。

フランスの消費者団体

 歴史も古く、規模も大きく(最も規模が大きい団体は67.2万人の会員数)、活動も多岐に亘っており、財政の基盤も強固である。

日本の制度との違い

 日本は共通義務確認訴訟(第一段階)の判決は事業者に義務がある責任があるということの確認だけだが、フランスは、損害額、損害の算定方法、支払方法まで定めてしまう。また個別の消費者への通知や支払いは、事業者に課せられている。フランスの制度はうまく進めば、消費者団体は訴えをし、責任を認めさせれば、大体の仕事は終わりということになり、争いがなければ迅速に対応が進む。

フランスのグループ訴訟の特徴

  1. ①少額多数被害である
    消費者一人あたりの損害額は低額でも、対象者が多い為、損害額は巨額。このような消費者被害を回復するというのが不当な収益を吐き出させる、不当な取引を抑止することにもつながる。
  2. ②継続的契約が多い(賃貸借、通信契約等)。
    対象消費者の範囲が明確になっていることが多い。また事業者が消費者に償還するという意味では、事業者は振込手数料とかを負担しなくてもすむ等のメリットもある。
  3. ③和解や調停による解決が重要視されている
    和解が成立すれば、事業者が直接消費者に償還するので、消費者団体が負担を強いられることはない。

フランスからみた日本の制度への示唆

  1. ①団体規模の違いに対応するために
    フランスはFacebookやTwitter等のSNSを活用して、広く消費者へ発信している。フランスと比較して日本は団体の規模は小さいが、フランスを見習ってFacebookやTwitter等、様々な情報手段を活用して、もっと消費者へ積極的にアプローチしていくことが必要。
  2. ②活動の多様性
    フランスの消費者団体は、規模が大きく、活動も多岐に亘っている。一方、日本は、規模も小さく、活動も一部になっている。しかし、様々な専門性を持った市民団体と協力することで解決できる。
  3. ③少額多数被害
    日本の制度で対応するには負担が大きすぎる。少額の事案では、和解という解決も必要。事業者が責任を認めて自ら返金をするという内容の和解は禁止しないと、特定適格消費者団体の認定、監督等に関するガイドラインにも書かれている。
  4. ④手続遂行面
    共通義務確認訴訟(第一段階)第一段階から対象消費者とのつながりを積極的にもとめていくことが必要。第一段階で勝訴したら、消費者に呼びかけ、授権受けると建前ではなっているが、証拠も必要だし多数性も裏付けないといけないので、第一段階からなるべく多くの消費者と接触をもって証拠も確保しておく、いざ簡易確定手続きが開始したときには、説明の必要な消費者はあまりいないというのがコスト的にも理想。フランスでは事業者が払うのが基本だが、それが期待できない時に備えて第一段階から広く呼びかけ、申し出てくださいといういように言っている。これは見習うべき。

質疑(一部抜粋)

Q. フランスの認証団体は、1万人以上の有償会員が必要とのことだが、会費はいくらくらいか。
A. 団体によって違うが、CLCVで年間20ユーロ(2400円)。
Q. 少額多数被害の場合で事業者が弁済能力がない場合は、差し押さえ等の措置があるのか。少額なので、消費者が泣き寝入りするしかないのか。
A. フランスは日本の地裁以上だと弁護士をつけないといけない。少額だと一人で弁護士に依頼はできないということもあり、今までは泣き寝入り。ある程度集団化しないとできなかった。今回アモン法ができたので、判決が出た後にどうなるかに注目したい。また事業者が弁済能力がない場合には、倒産処理になる。
Q. 訴訟にかかる費用負担ついて聞きたい。消費者への通知に係る費用がフランスでは全額事業者が負担するという理解でよいか。他に事業者が持つことになっている費用で、ポイントになることはあるか。
A. 消費者への通知公告費用は、事業者負担。第一段階の訴訟にかかる費用は、基本各自負担。個々の消費者に返金する費用は、判決で決められることになる。
Q. 消費者裁判手続法がカバーできる消費者のレベルを聞きたい。消費者と事業者の線引き等。
A. 消費者のレベルは、フランスと日本では違いはない。消費者がある程度お小遣いを稼ぐということで事業的なことを行うことがあるが、事業目的であれば、消費者裁判手続法の範囲から外れる。事業の為に購入した資材とみなされるのか、それが主目的はない消費材としてみなされるのかは事例によってケースバイケースである。