消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

申入れ・要請等

東京オリンピック・パラリンピック競技大会期間中の宿泊契約について

 昨年に引き続き、宿泊料金全額をキャンセル料としている宿泊施設があるかもしれません。予約時にはキャンセル料をよく確認しましょう。解約時には宿泊施設とキャンセル料の取り扱いについて協議しましょう。

 皆様ご存じのとおり、昨年の夏に開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、【東京オリ・パラ】と略す。)は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で今年の夏季(2021年7月23日~9月5日)に延期されました。

 今年の【東京オリ・パラ】の開催にあわせて、東京都内の宿泊施設の予約を検討されている方もいらっしゃると思います。また、新型コロナウィルス感染の収束がみえない中、宿泊予約のキャンセルを検討されている方もいらっしゃると思います。

 昨年、当機構では、【東京オリ・パラ】の観戦等を目的とした宿泊契約のキャンセル料に関して下記の取り組みをしましたので、この機に改めて公表いたします。今後の参考としていただければ幸いです。

経過

 2020年、新型コロナウィルス感染拡大による【東京オリ・パラ】延期決定前には、「東京オリ・パラ観戦を目的に都内のホテルを予約した。同大会開催の1年近く前にキャンセルしたにもかかわらず、キャンセル料として宿泊料金全額を請求されている」といった情報が当機構に寄せられ、また、延期決定後には、「東京オリ・パラが延期になったのに宿泊料金全額をキャンセル料として請求されている」との情報が寄せられました。

宿泊料金全額をキャンセル料とする規定について

 当機構では、上記の情報提供をふまえ各宿泊施設の約款等を検討し、【東京オリ・パラ】延期決定前の考え方として、解約の時期にかかわらず宿泊料金全額をキャンセル料とする定めは消費者契約法第9条1号に該当し不当であることを指摘しました。

 また、【東京オリ・パラ】の延期決定後にキャンセルしようとした場合に宿泊料金全額をキャンセル料とする規定があると説明された場合については、当該不返還条項は事情変更の原則の適用により消費者契約法第10条に該当し無効である可能性があることを公表しました。

各宿泊施設の対応について

【東京オリ・パラ】延期決定前

 当機構はキャンセル時に宿泊料金全額を不返還とするとの規定を使用していた宿泊施設に対して消費者契約法第9条1号を適用して是正を求めていましたが、その後、【東京オリ・パラ】延期決定となりました。この事情変更に際して柔軟に返金対応しているとの回答があった宿泊施設の例を公表しました。

【東京オリ・パラ】延期決定後

 その後も、当機構では、新型コロナウィルス感染拡大による【東京オリ・パラ】延期を理由とする宿泊契約のキャンセルであっても「いまのところ返金しない予定と言われた」「来年に振替と言われた」「どのように対応するかの連絡がこない」との情報提供があった宿泊施設6社に対応状況について問合せを行っておりました。

消費者保護の観点から柔軟に対応したケーヨーリゾート開発合同会社など5社

 問い合わせを行った宿泊施設6社のうち5社については、原則、キャンセル料は宿泊料金全額と定めているものの、予約者の負担を考慮等した結果、予約者と個別協議のうえ、宿泊日を2021年開催の【東京オリ・パラ】日程に振り替えたり、キャンセル料を無料にする等の柔軟な対応をしているとの回答でした。

 このように消費者に配慮した5社の対応は積極的に評価できると考え、事業者名の掲載許可をお願いし、上記1社より許諾いただきました。

規約どおりに対応(キャンセル料は宿泊料全額)と1社が回答

 残りの1社については、【東京オリ・パラ】延期という事情があったにもかかわらず、規約どおりに対応(キャンセル料は宿泊料全額)という問題のある回答でした。

情報提供

 国民生活センターから【東京オリ・パラ】観戦のための宿泊予約のキャンセル料に係る紛争結果概要が公表(※1)されています。

(※1)「国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和2年度第4回) 宿泊予約の解約に関する紛争(2)」

 本件は国民生活センターADR(※2)への申請人が、宿泊施設側が定めるキャンセル料が宿泊予約成立後は返金不可(キャンセル料は宿泊料金全額)だったことから同ADRに解決の仲介を求めた事案です。

 結果的には宿泊施設側から手続きへの協力を得られず不調に終わりましたが、報告の中で仲介委員が【東京オリ・パラ】の延期に伴う解約の場合の適正なキャンセル料に関する考え方を整理して示しており、同種事案の解決の参考になりますのでご紹介します。

 但し、この事例のように宿泊契約成立後はキャンセル料の交渉に全く応じない事業者も存在しますので、解約時のことも想定して宿泊施設のキャンセルポリシーをよく確認しましょう。

(※2)国民生活センターのADR(裁判外紛争解決手続)の紹介