消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

差止請求訴訟

山梨県に対する訴訟 一審勝訴判決のご報告 
― 当機構が求めた違約金条項の差止請求が全面的に認められました ―

 医学部卒業後に特定の地域で診療を行うことを条件とした「地域枠制度」は、全国の医学部で広く導入されています。多くの地域枠制度は、都道府県による修学資金貸与制度と一体的に運用され、卒業後に指定区域で一定期間勤務すれば奨学金の返還義務は免除されますが、そうでない場合には、これを返還しなければならない仕組みです。
 しかし、山梨県の運用する地域枠制度は、指定区域・指定年限の従事ができなくなった場合、総額936万円の奨学金に10%の利息を付したうえで、さらに842万4200円もの高額な違約金を課すという、全国的にも極めて厳しい内容を特徴としていました。
 当機構は、この高額な違約金条項が若年者の将来選択を不当に拘束し、消費者契約法に反するものであるとして、山梨県を被告として違約金条項の差止めを求める訴訟を提起しました。
 そして2026年1月20日、甲府地方裁判所は、当機構の主張を全面的に認める画期的な判決を言い渡しました。

 裁判所は、次のいずれの条項も消費者契約法9条1項1号および10条により無効であると判断し、山梨県に対してこれら条項の使用差止めを命じました。

  • 地域枠受験時に提出を求められる誓約書の違約金条項
  • 医師国家試験合格後、研修開始前に締結を求められる契約書の違約金条項

若年者の自己決定権を守る観点から、司法が明確な歯止めを示した極めて重要な判断であり、当機構として高く評価しています。

判決で示された主要な争点と判断

  1. ①地域枠医師の契約は「消費者契約」に当たるか
    裁判所は、次の点を踏まえ、地域枠医師は消費者として契約を締結する立場にあると認定しました。
  1. ②違約金条項は「消費者契約の解除に伴う」ものか(消費者契約法9条1項1号)
    文言上は客観的事実を基準とするように見えますが、実際には地域枠医師が自ら勤務継続を断念し、他院での勤務を希望する場面で適用されることが多い点を重視し、実質的に契約解除を前提とした違約金条項であると判断しました。
  1. ③824万4000円という違約金額は「平均的損害」を超えるか
    裁判所は、次の点をふまえ、違約金額の全体が平均的損害を超えており無効と判断しました。
  1. ④消費者契約法10条(信義則違反)該当性
    裁判所は、次の点を踏まえ、消費者の利益を一方的に害する条項であり無効と判断しました。

今後への期待と原告としての見解

 今回の判決は、地域枠制度に高額な違約金を組み込むことで若年者に課されてきた過度な負担と不合理な拘束に対し、司法が明確に歯止めをかけた点で極めて大きな意義があります。当機構として、この判断を強く支持するとともに、今後の制度運用に向けて以下の点を訴えます。

 今回の判決を契機として、若者の将来を不当に縛らない制度設計へと転換が進み、医師が安心してキャリアを選択できる環境が整うことを強く期待します。

一審判決までの経緯