消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

差止請求訴訟

後払い決済サービスを提供する株式会社ネットプロテクションズに対し、支払い遅滞時の遅延損害金に加え「延滞事務手数料」の名目で支払い義務を課す条項などの差止請求訴訟を提起しました。

 株式会社ネットプロテクションズ(東京都千代田区麹町4丁目2-6  住友不動産麹町ファーストビル5階、以下「ネットプロテクションズ」といいます。)は、後払い決済サービスを提供する事業者です。後払い決済サービス(Buy Now/Pay Later(BNPL))は、先に商品を注文・購入し、後で支払う決済方法を提供するサービスで、右のグラフのように、近年、利用が拡大しています。

 後払い決済サービスの利用者は、クレジットカード等を保有していなくても(クレジットカード情報の入力をせずに)、インターネット通信販売などで、後払いで商品・サービスを購入することができます。ネットプロテクションズは、利用者が同社加盟店にて、ネットプロテクションズの提供する後払い決済サービスである「NP後払い」を利用して商品・サービスを購入した場合、加盟店から利用者に対する売買代金支払請求権の債権譲渡を受け、利用者に代金の請求を行います。(右図)

 当機構は、ネットプロテクションズの使用する「NP会員利用規約」や「NP後払い利用規約」について、次のような趣旨で東京地裁に差止請求訴訟を提起しました。

1.差止請求の趣旨

  1. (1) 消費者との間で、後払い決済サービスにかかる会員契約を締結するに際し(消費者が「NP後払い」による決済サービスを利用するに際し)、以下の意思表示を行わないこと。
    1. ①会員サービスの利用により会員に発生した損害について、ネットプロテクションズの故意又は重過失による場合を除き、ネットプロテクションズの損害賠償責任その他のいかなる責任も負わないとの意思表示。
    2. ②会員が代金等に係る決済手段として、ネットプロテクションズの提供する決済手段を用いた場合に、当該代金等に係る債権をネットプロテクションズの加盟店もしくはネットプロテクションズが提携する会社を経由してネットプロテクションズが譲渡を受けるに際し、会員がネットプロテクションズ加盟店に対して有する抗弁権を放棄するとの意思表示。
    3. ③利用者がネットプロテクションズに対する支払債務の履行を遅滞した場合において、利用者が支払期限超過後もネットプロテクションズの提供する決済サービスによる支払方法の提供を受けるときは、ネットプロテクションズの請求書又は電子メールの発行日から一定の期間を経過するごとに、遅延損害金の他、延滞事務手数料の累積額を支払うとの意思表示。
  2. (2) 上記第1項記載の意思表示が記載された文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。以下「文書等」という)、その他一切の表示を廃棄すること。
  3. (3) 従業員らに対し、上記(1)記載の意思表示を行ってはならないこと及び上記(1)の意思表示が記載された契約書その他一切の表示を破棄して使用しないことを周知徹底させる措置をとること。

2.差止請求訴訟を提起するまでの経緯

  1. (1) ネットプロテクションズの「NP後払い」の決済サービスを利用した消費者から、支払いを遅滞した際に、遅延損害金に加えて「延滞事務手数料」の支払いを求められた。この「延滞事務手数料」は、以前消費者機構日本の事業者対応により(株)メルペイが自主返金を行った事案と同じ性質のものではないか、という情報提供が当機構にありました。
  2. (2) 当機構としては、年14.6%の「遅延損害金」を収受しているのであれば、それを超えて、さらに「延滞事務手数料」を収受することは、消費者が支払期日までに支払わない場合における損害賠償の額の予定又は違約金の額が年14.6%を超えることとなるため、消費者契約法9条1項2号に違反し得る可能性があると考え、消費者の支払いが遅延した場合に、どのような内容の請求を行っているのか、また、その請求の根拠についての考え方を聴取するため、ネットプロテクションズに意見交換の申し込みを行い、対面で意見交換を行いました。ネットプロテクションズより「延滞事務手数料」は損害賠償の予定ではなく、「NP後払い」による支払い方法の提供を受ける役務の対価である、との見解の説明がありました。
  3. (3) 当機構は、「延滞事務手数料」について、ネットプロテクションズが債権譲渡を受けた自らの債権回収を図るためのもので、これは事業者としての通常業務の一環であり事業者に生ずる平均的な損害に含まれると考えました。よって、当該回収コストは平均化して年14.6%に含まれ、遅延損害金の他に、別途「延滞事務手数料」を収受することは消費者契約法9条1項2号に抵触し、年14.6%を超える部分は無効になるとの考えのもと、ネットプロテクションズに見解を問う質問書を送付しました。
  4. (4) 質問書に対して、ネットプロテクションズから、「延滞事務手数料」については「NP後払い」による支払い方法の提供を受ける役務の対価であり、損害賠償額の予定又は違約金にはあたらない、という従来と同じ内容の回答を得ました。
  5. (5) 消費者からの情報提供の内容、ならびに上記回答を検討した結果、「延滞事務手数料」は、消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)1項2号に抵触する不当条項であるとの結論に達しました。また、規約を精査したところ、ネットプロテクションズの軽過失の全部免責条項、ならびに消費者の抗弁権を放棄させる条項などについても不当条項であると考え、裁判外での申し入れを行いました。
  6. (6) これに対し、ネットプロテクションズから、当機構の申し入れ事項の全てについて、当機構の見解とは異なり、不当条項ではないと考える、という回答を得ました。
  7. (7) 以上のような経過から、当機構は消費者契約法第41条に基づく差止請求書を送付し2026年3月3日に相手方へ到達したことを確認しました。到達後、改めて協議の場を持ちましたが、是正措置が取られなかったことから、やむなく東京地方裁判所に提訴することとしました。