申入れ・要請等
【2025年6月5日:掲載】
株式会社IKKIの売買契約書の契約条項において「無催告解除」などの条項が改善されました。
消費者機構日本に対して、株式会社IKKI(さいたま市北区)が運営する自動車買取の情報提供があり、「売買契約書の契約条項」を確認したところ問題のある条項が確認できました。そのため消費者機構日本は、株式会社IKKIに対して、契約条項の見直しについて申入れを行いました。その結果、一定の改善が図られたとことを公表いたします。
申入れ1
申入れの趣旨
契約条項第6条の削除を求めます。
申入れの理由
契約条項第6条前段は、「甲が、乙に対して、車両の引渡しをせず、又は第1条記載の名義変更に必要な書類の引渡しを完了しない場合」に、「乙は、甲に対し事前に通知・催告等をすることなく直ちに本契約を解除でき」るとして、乙は無催告で解除ができるという条項になりますが、このような無催告で解除ができる条項は債務不履行に基づく解除の場合に催告を要件と規定した民法541条に比し消費者の義務を加重する条項になります(①)。
また、契約条項第6条後段は、乙が債務不履行解除をする場合の乙からの損害賠償請求に対して甲は一切の異議が申し立てられない、すなわち、かかる場合に乙から損害賠償を請求された場合には甲はどのような金額でも一切異議なく応じなければならないと読めるものです。このように相当因果関係を超える損害も請求できるような同条項は、損害賠償について相当因果関係の範囲で請求できることを定めた民法416条1項・2項に比して消費者の義務を加重する条項になります(②)。
上記のとおり①及び②はともにそれぞれ任意規定に比して消費者の義務を加重する条項であり、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものですから、消費者契約法第10条の規定により無効と考えます。
申入れの結果
契約条項(改定後) | 契約条項(改定前) |
---|---|
甲が、乙に対して、車両の引き渡しをせず、又は第1条記載の名義変更に必要な書類の引き渡しを完了しない場合は、乙は、甲に対し、ご催告の上契約解除出来るものとする。 それにより損害が発生した場合、その損害を請求することがあります。 |
甲が、乙に対して、車両の引渡しをせず、又は第1条記載の名義変更に必要な書類の引渡しを完了しない場合は、乙は、甲に対し事前に通知・催告等をすることなく直ちに本契約を解除でき、甲は、乙から損害賠償請求されても一切の異議を申し立てないものとする。 |
申入れ2
申入れの趣旨
契約条項第9条の削除を求めます。
申入れの理由
契約条項第9条第1文(本文)「甲は一方的な理由による本契約の解除はできないものとする。」の「一方的な理由による」という文言の意味は不明確ですが、甲からの契約解除は一切認めないように読めるところ、このようにいかなる事情においても契約締結後の解除を制限する条項は、消費者契約法に基づく取消しや民法上の取消しなど法律上消費者に認められた契約の取消し等について一切の主張ができないかのように読めるため、それら契約の取消しを認める法律等に比して消費者の義務を加重する条項になります(①)。
また、同条第2文の「万一、一方的な理由又は半強制的に解除を求め、乙に損害が生じた場合は、甲は、乙から損害賠償請求されても一切の異議を申立てないものとする。」は、甲からの解除等の場合に乙からの損害賠償請求に対して一切の異議を申し立てないものと規定されていますが、甲が契約解除をして乙から損害賠償を請求された場合にはどのような金額でも一切異議なく応じなければならないと読めるところ、このように相当因果関係を超える損害までも請求できるような同条項は、損害賠償について相当因果関係の範囲で請求できることを定めた民法416条1項・2項に比して消費者の義務を加重する条項になります(②)。
上記のとおり①及び②はともにそれぞれ任意規定に比して消費者の義務を加重する条項であり、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものですから、消費者契約法10条の規定により無効と考えます。
申入れの結果
契約条項(改定後) | 契約条項(改定前) |
---|---|
甲の都合による本契約の解除により、乙に損害が生じた場は、甲に対しそれにより生じた損害を請求することがあります。 | 甲は一方的な理由による本契約の解除はできないものとする。万一、一方的な理由又は半強制的に解除を求め、乙に損害が生じた場合は、甲は、乙から損害賠償請求されても一切の異議を申立てないものとする。 |
なお、株式会社IKKIからは、改定後の「売買契約書の契約条項」は、2025年1月から使用しているとの回答がありました。
以上