消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

申入れ・要請等

アエラホーム株式会社(建築請負事業者)の建築工事請負契約約款が、協議を経て、改善されました。

 消費者機構日本は消費者からの情報提供を受け、アエラホーム株式会社(東京都千代田区)に対して、当該事業者が使用する建築工事請負契約約款(以下本件約款という)について、「申入れ・要請・問合せ」を行いました。

 当該事業者から、2024年4月19日付で回答を受領しました。
 その後、2回にわたる面談(6月4日と7月11日)による意見交換を重ねてまいりました。

 その結果、一部合意できない条項があったものの、当機構の「申入れ・要請・問合せ」の趣旨に従い、概ね本件約款が改善されることになりましたので、協議を終了しました。

 なお、当該事業者と見解が相違し、合意に至らなかった条項については、今後、当機構に寄せられる被害情報を注視し、必要に応じて改めて申入れ等を検討していくこととします。

 当機構の「申入れ・要請・問合せ」内容と当該事業者の回答は以下の通りです。
 なお、当機構は2020年12月1日版の約款を前提に申入れ等を行っています。一方、アエラホーム社は2023年2月1日版の約款に基づき回答をしています。

消費者機構日本の申入れ等の内容 アエラホーム社の回答
申入れ事項 【第23条(契約不適合責任等)第7項】
 今後消費者との間で、契約の締結の際、貴社と消費者との間で使用している本件約款第23条第7項本文を内容とする意思表示を行わず、また当該約款からこれを削除することを求めます。
第23条(契約不適合責任等)第7項
 7前 二項の規定にかかわらず、注文者が契約不適合(数量の不足は除きます。)を引き渡しの時から一年以内に、具体的な契約不適合の内容、請求する損害額の算定根拠等当該請求等の根拠を示した上で、契約不適合責任を問う旨を明確に請負者へ通知しないときは、その契約不適合を理由とする修補請求、代金減額請求、損害賠償請求及び本契約の解除を行うことができないものとします。(後略)
 住宅の品質確保の促進等に関する法律に抵触するので知った時から1年以内に修正します。引渡しから1年以内に連絡しなければならないわけではありません。
 さらに、請負者が契約不適合を知っていた場合または重大な過失により気づかなかったときは知った時から1年以内でなくても注文者から契約不適合の請求ができるようにしました。
要請事項 【第17条の2(不可抗力による損害)第2項】
 不可抗力による損害は全て注文者がこれを負担することが定められています。上記条項は、民法の規定の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものですので、当該条項の削除を要請します。
 消費機構日本が持っている約款は旧版です(2020年12月1日版)。請負者の善管注意義務が盛り込まれていません。不可抗力による損害は注文者の負担となっていましたので、現約款(2023年2月1日版)ではこの善管注意義務を怠った場合は請負者の負担、善管注意義務を果たしたにもかかわらず生じた損害は注文者の負担となっています。
 今後の改定では、善管注意義務を果たしたにもかかわらず生じた損害は注文者の負担ですが、その損害額を注文者と請負者が協議して定めることにします。火災保険を建物に付帯するので実際は限りなくなく負担はゼロに近くなります。注文者側に有利な条項を追加しても当社にリスクが生じないとの判断になりました。
問合せ事項① 【第7条(地盤調査)及び第8条(地盤改良及び基礎補強)第1項】
 第7条では、注文者は遅くとも着工日の1週間前までに地盤調査を実施することが定められ、第8条第1項では、前条の地盤調査の結果、地盤改良ないし基礎補強等の工事が必要であることが判明した場合、同工事の請負契約を締結することが定められています。
  1. ①地盤調査を行わずに建築工事請負契約の内容を決めているのでしょうか。
  2. ②仮に建築工事請負契約締結時に地盤調査を行わない場合、注文者に対し、地盤改良ないし基礎補強等の工事費用の負担につき、いつ、どのような説明をしているのでしょうか。
  1. ①通常、設計・施工一括型で工事を受注しています。そして、基本設計序盤の設計概略が定まった段階で建設工事請負契約を締結することになります。
  2. ②建設工事請負契約の締結時には、地盤改良ないし基礎補強等の工事費用は、地盤調査実施後に確定し案内する旨を説明しています。その上で契約書に添付する見積書には、別途発生が見込まれる「諸費用」の欄に、地盤改良ないし基礎補強等の工事費用として想定される参考金額(概算)を記載して案内しています。
問合せ事項② 【第9条(建築確認申請が受けられない場合の特例)第3項】
 建築確認済証の交付が受けられない場合、設計仕様等の変更によって生じる材料、工事等の増加費用は注文者が負担することが定められています。これは、請負者の責めに帰すべき事由により増加した材料、工事等の費用も注文者が負担するのでしょうか。仮にそうであれば、その理由をお知らせください。
 次のとおり追加した。
 「前2項の変更によって生じる材料の増加費用はその額を注文者と請負者が協議して定め注文者が負担するものとする。」
 建築確認申請が受けられない場合は設計のミスや見落としが原因となる可能性が高く、通常は請負者の責めに帰す事由と考えられます。一方、完成建物は注文者の所有物になるので、たとえ設計ミスがあったとしても、費用増加分の価値は注文者に帰属しますので、注文者が負担することは合理的だと考えます。
 ただし、当社に落ち度がある可能性が高いので折半あるいは当社で一部負担しているのが実情であり、協議の上、金額を合意し、事案に応じて注文者にご負担いただくこととしています。
問合せ事項③ 【第18条(工事内容・工期の変更協議等)第6項】
 請負者の責めに帰すべき事由により工事内容等の変更が必要になった場合、請負者と注文者は、協議により、必要妥当な工事内容等の変更を合意するものと定められ、同条第7項では、請負代金等を変更する場合、工事の増加部分は時価によるものと定められています。これは、請負者の責めに帰すべき事由により工事内容等の変更が必要になった場合、工事費用の増加分を注文者が負担するのでしょうか。仮にそうであれば、その理由をお知らせください。
 当社の責めに帰す場合の工事内容・工期の変更の場合、従来の記載では当社のミスで発生したものを直す費用も注文者の負担になるように捉えられる表記がありましたので、但し書きを次のとおり追加した。
 前項により工事内容等の変更が合意された場合、請負者の責に帰すべき事由の解消に要する工事費用の増加分については請負者がこれを負担する。
問合せ事項④ 【第19条(工期の変更)第2項】
 建築工事請負契約約款第十九条第2項では、請負者の責めに帰すべき事由により工期の変更が必要になった場合、請負者と注文者は、協議により、必要妥当な工期等の変更を合意するものと定められています。この場合、注文者は、請負者に対し、工期の変更によって生じた損害の賠償を請求できるのでしょうか。
 従来は、協議により必要・妥当な工期を合意する運用としていました。しかし、消費者機構日本との面談で、この条項をみた注文者は、工期の変更を合意しなければならないと思ってしまうという指摘を受けました。
 そこで、実態に即した表現を検討しました。基本的な表現は変わりませんが、「請負者と注文者は必要かつ相当な工期の変更について双方協議の上で決定するものとする」に改定しました。
 この協議では、例えば、工期の延長により仮住まいの費用が増加する場合、この費用をどうするかについても協議した上で合意することができます。
問合せ事項⑤ 【第25条(履行遅滞、遅延損害金)第1項】
 遅延損害金の算定時に、本住宅の出来高部分および発注済み分を控除して算出するため、完成間際の違約金が低額になります。そのため、仮住まいの賃貸料を含めた実際の損害額が年利10%を超えた場合は、これに対する保証はあるのでしょうか。
 過去に貴社の約款に同様の定めがあったため、当機構が貴社に対して2017年(平成29年)7月31日付け「申入れ・要請・問合せ」書面により、上記問合せを行ったところ、貴社から、「注文者に認められる損害賠償の範囲を制限する規定ではなく、規定を超えた損害賠償請求を排除するものではない」旨の回答を受けたため、本書面でも念のため確認する次第です。
→合意できなかった条項となる。
 今回の回答は、損害賠償の範囲を実際に要した仮住まいの家賃に限定するものであった。
 この点、前回(2017年7月31日付)の申入れ・要請・問合せに対する回答は仮住まいの賃料に限られていなかったが、前回の約款の条項に、違約金を超える損害賠償請求ができる旨の明文の規定はなかった。今回は実際に要した家賃に限定しているものの、条項に明記されることになった。
 その上で、消費者に不利な運用とならないよう、第20条(請負代金の変更)で第3項を新設し、そこでは請負代金の額の変更が明記され、事業者の責により工期が延びることが発覚した場合は、協議の上、この時点で全ての損害を含めた問題解決を図るとの回答があった。
 今後、当機構に寄せられる被害情報を注視することとする。
 「請負代金」から「出来高部分および検査済み(現場に納品されているかどうかで判断する)の材料に相当する代金を控除した金額」に対する年利10%の遅延損害金(損害賠償の予定)を請求できることを明記しています。
 これに但し書きを追加しました。仮住まいのために実際に要した賃料額が損害賠償の予定を超える場合は注文者と請負者は協議して定めるものとします。工事が遅延して追加の家賃が発生したときは、この家賃の実損額については当社で負担すべきと考えます。
 そこで、実際に要した家賃に限定しました。実際に発生する賃料以外の損害が補填されないというリスクは残りますが、その損害の大部分は仮住まい賃料と考えられます。また、契約工期の変更時に請負代金の一部として相殺することとなりますが、第20条(請負代金の変更)3項により、当社の責により工期が延びることが発覚した場合は、協議の上、この時点で全ての損害を含めた問題解決を図ることができます。
 第20条(請負代金の変更)第3項
 3前条第2項の場合において、工期の変更により注文者に費用の負担又は損害が生じることが明らかなときは、請負者と注文者は、双方協議のうえで予め請負代金の額と支払時期の変更を決定するものとします。