消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

消費者機構日本とは

第17回通常総会 開催報告

 第17回通常総会は、新型コロナウィルス感染防止の観点より書面議決または委任状上での出席をお願いし、理事等、最低限の人数に絞って開催いたしました。以下、第17回通常総会についてご報告いたします。

日時

2021年6月11日(金) 17時30分から18時15分

場所

東京都千代田区六番町15 主婦会館プラザエフ5階第1会議室
※Zoom(ウェブ会議システム)による双方向参加を含む。

参加者

出席表決権総数108(実出席表決権数27、《Zoom参加による表決権数15を含む》、委任状表決権数4、書面表決権数77)。表決権総数123の過半数の出席で成立

議題

審議事項

報告事項

  1. 2021年度事業計画
  2. 2021年度予算

議事の経過の概要及び議決の結果

 板谷事務局長が17時30分現在の出席状況について定款第31条の定める成立要件を充足したこと、また、オンラインでの参加者についてはいずれも会場及び参加者相互での即時通信が可能であることを確認した旨報告し、総会の開会を宣言した。そして、定款第30条に基づき藤井喜継理事長が議長に就任する旨発議し、全員異議なく承認した。

 続いて議事に先立ち中山弘子会長が挨拶を行い、その後、議長より定款第34条に基づく議事録署名人として個人正会員の牧静香(通称:並木静香)氏の選任を提案し、異議なく承認された。書記には事務局の佐藤義勝職員を指名し、議事に入った。

 議事は、第1号議案と第2号議案を提案後、上山精一監事より監事監査報告を受け、その後第3号議案と第4号議案を提案した。一括して質疑を行った後、議案ごとの採決を行った。その後、報告事項を一括報告し質疑を行った。

議案の提案

(1)第1号議案 2020年度事業報告承認の件

 被害回復関係業務については、東京医科大学訴訟の簡易確定手続をすすめ、他2件については昨年度から続き共通義務確認訴訟の取り組みをすすめた。また、裁判外の申入れ・要請等により3件で自主的返金を促進することができた。これらの実践を通じ明らかになってきた消費者裁判手続特例法の改善課題について消費者庁のヒアリングで説明するなどした。

 また、差止請求関係業務については差止請求訴訟1件が係属中で、新たな裁判外の申入れは21件となり、過年度の申入れ事案も含め、改善結果または経過について16件を公表した。設立以来の累計では、135件で是正をはかることができた。

 加えて、組織・財政基盤強化の取り組みとしては、賛助会員加入の働きかけをすすめ、一部成果に結びついているが、訴訟関連の事務負荷が高い中、クラウドファンディングの具体化などの新たな展開に課題を残した。

(2)第2号議案 2020年度決算承認の件

 会計期間は2020年4月1日から2021年3月31日、資金の範囲は現金・預金、商品券、未収金、未払い金、預り金等を含めたものである。

 2020年度は収益事業を行ったため、都民税の均等割り(70,000円)の納税義務が生じており、未払い金に計上した。

 活動計算書については、経常収益14,903千円余に対し、経常支出16,674千円余となり、当期経常増減額は約177万円の減(赤字)となった。これは東京医大事案の簡易確定手続きに係る費用が発生した一方、同訴訟の費用・報酬の受領は2021年度となることが主な要因である。

 貸借対照表の2020年度末の正味財産は2,880万円余となった。なお、東京都からの訴訟費用貸付のうち東京医大事案に関するものについては、2021年度での返済を予定できることから「1年以内返済長期借入金」として流動負債に計上した。長期借入金の明細については決算書の計算書類の注記5に、また事業別損益状況及び事業費と管理費の区分については、決算書6ページ以降に示した。

(3)監査報告

 上山精一監事より、理事の業務執行は適正に行われ、日常の会計処理も適正で、決算諸表は正確に作成されている旨の監査報告が行われた。また、監査意見として以下の2点の指摘があった。

  1. ①特定適格消費者団体として被害回復関係業務を着実に実施できるよう、さらに財政強化と体制整備を進められたい。
  2. ②引き続き、行政との連携強化を通じて消費者団体訴訟制度の社会的理解、適格消費者団体への信頼を広げていくよう、努められたい。

(4)第3号議案 定款の一部変更の件

 変更の第1点は、常任理事会に係る規定の廃止を行うことである。その理由は、差止請求業務・被害回復業務に係る「重要な事項の決定」は理事会で行うことが法定されており、理事会の開催回数が年10回を超える状況で、ここ数年実際に常任理事会を開催する機会が無くなっているためである。

 第2点は事業に関する第5条の規定を整理することである。法に基づく差止請求関係業務に対応する第5条2号と、法令に基づかない任意の是正要請である第5条1号の事業の区分をより判り易くするため、同条1号の記述を見直す。また、現在では実施していない第5条8号(事業者の自主ルールに対する提言)を削除する。

 第3点は第14条の理事の定数拡大を行うことである。当機構への消費者からの情報提供は増加し、それを審議する諸会議に数多くの消費生活の専門家及び法律専門家に参加いただいている。それら事案検討の場と理事会との連携強化のため、理事定数を拡大する。その他、軽微な文言上の修正を行う。

(5)第4号議案 理事補充選任の件

 現在、理事長職にある藤井喜継氏より理事を辞任する旨の申し出があった。その理由は、日本生協連における藤井氏の管掌が運営組織担当の専務理事から商品事業(生協商品の開発・供給)担当の専務理事へと変更となったため、消費者団体訴訟制度を担う団体の役職を継続することは適切でないと判断したためである。なお、藤井氏の後任の理事長、代表理事は、本総会後の第1回理事会で選任する予定である。

 この辞任に伴う理事枠に、新たに板谷伸彦氏を理事として補充選任することを下記のとおり提案する。

理事候補者(敬称略)
氏名 所属等
板谷 伸彦 消費者機構日本 事務局長

議案の質疑

 第1号議案および第3号議案ついては、正会員より質問が出され、その質問に対する回答が下記概要にて行われた。

(1)クラウドファンディングの活用について(第1号議案関連)

[質問]
国家賠償訴訟への寄附では事例が出てきているが、民事訴訟への寄附を仕組みに乗せることに難しさがあるとの評価が示されたが、具体的にどのような難しさを認識されているか補足説明をして欲しい。
〔回答〕
クラウドファンディングの事業者とこの間協議を行ったが、国賠訴訟は公益性が高いことがあらかじめ判明している事案が多い一方、一般の民事訴訟は私人間の争いであり判決が確定するまでは、当事者の一方を支援することの判断が困難であるとの考えである。裁判を担当する弁護団とも相談したが、例えば東京医大訴訟のように、共通義務確認訴訟で相手方の法律上の責任が認められた後であれば、クラウドファンディングを実施し通知公告費用にあてる等の可能性があるのではないかと考えている。

(2)会員数の増減について(第1号議案)

[質問]
個人正会員数について、2019年度末と2020年度末を比較すると、3名減となっているが、この理由や原因などを説明して欲しい。
〔回答〕
様々な要因があると考えるが、設立時に入会された方が定年退職などの理由で退会されることが主な要因ではないかと捉えている。また、そもそも当機構の設立当初から個人正会員はあまり増員せず、この間は協力会員を中心に呼びかけを進めてきた経過もある。一方で、適格消費者団体の要件として、法律で規定されているわけではないものの、正会員数100名超が求められている。現在はこれを満たす会員数となっており、今後も団体会員などと合わせ、現在の水準を維持するようにしていきたいと考えている。

(2)定款の一部変更について(第3号議案)

[質問]
事業者の自主ルールに対して提言を行う定款第5条8号の事業は現状実施していないので削除するとのことだが、団体の目的に沿っており、残しておいてもよいのではないか。
〔回答〕
設立当初は事業者の自主ルールに対して消費者の権利確保の観点から提言を行う事業を行ってきたが、差止請求業務との関係で当機構の活動の正当性に疑義が生じないよう、適格消費者団体認定以降は第5条8号の取組みを行っていない。事業の実績が長年無いにも関わらず定款に規定していることは適切でないことから定款から削除することとしたい。

議案の採決

 議長より、表決権総数123個中、出席27個(うちオンラインによる参加15個)、書面議決77個、委任状4個の合計108個が出席し、定款第31条の要件を充足して総会が成立していることが報告され、議場閉鎖を行って直ちに採決に入った。

 オンライン参加者の意思表示は、カメラをオンにして画面上の挙手により行うこととした。採決結果は以下のとおり。

  1. (1) 第1号議案は、出席者の挙手賛成多数、書面表決77個のうち賛成が77個、あわせて出席した表決権数の過半数を超えており、定款第32条第3項に基づき可決・承認された。
  2. (2) 第2号議案は、出席者の挙手賛成多数、書面表77個のうち賛成が77個、あわせて出席した表決権数の過半数を超えており、定款第32条第3項に基づき可決・承認された。
  3. (3) 第3号議案は、出席者の挙手賛成多数、書面表決77個のうち賛成が77個、あわせて出席した表決権数の2/3を超えており、定款第60条に基づき可決・承認された。
  4. (4) 第4号議案は、出席者の挙手賛成多数、書面表決77個のうち賛成が77個、あわせて出席した表決権数の過半数を超えており、定款第32条第3項に基づき可決・承認された。なお、理事として選任された板谷伸彦氏は、その場で就任を承諾する旨の意思表示を行った。

報告事項の報告と質疑

 口頭での報告を割愛し、資料報告とする旨説明があった。(資料記載内容の概要は次の通り。)そのうえで、議長より出席者に対し質問意見がないか呼びかけられたが、特に質問意見はなかった。

(1)2021年度事業計画(2021年5月 7日第 11回理事会議決)

 昨年度に引き続き、消費者裁判手続特例法の共通義務確認訴訟及び簡易確定手続を遂行し、消費者の被害回復を実現するとともに、同法の改正課題について明確にしていく。加えて、差止請求関係業務を着実にすすめ、組織・財政基盤強化の取り組みの具体化を図っていく。

課題1
集団的消費者契約被害回復のための被害回復関係業務を推進する。
課題2
消費者被害の未然防止・拡大防止のため差止請求関係業務を推進する。
課題3
財政基盤を強化する。
課題4
情報提供受付と対応の円滑化をすすめる。
課題5
広報活動及び他団体との連携をすすめる。
課題6
消費者裁判手続特例法の改正課題、消費者契約法、預託法及び特定商取引法の改正論議などについて政策提言を行う。

(2)2021年度予算(2021年5月7日第11回理事会議決)

 経常収益29,245千円を計画。被害回復訴訟にともなう収益を含んでいる。
 経常支出28,578千円を計画。差止請求訴訟及び被害回復訴訟の費用を含んでいる。
 経常増減は667千円の増(黒字)を見込んでいる。

 以上で全議事を終了し、18時15分、議長が閉会を宣し、本総会を終了した。