消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

意見・提言

消費者裁判手続特例法の施行に伴う政令(案)、内閣府令(案)、ガイドライン(案)等に関して消費者庁に対し、意見を提出しました。

 2015年6月10日、消費者庁消費者制度課から、消費者裁判手続特例法の施行に伴う政令(案)、内閣府令(案)、ガイドライン(案)等に関する意見募集がありました。

 当機構は、以下の意見を提出いたしました。意見書はこちら

1.申請書の添付書類関係

 ガイドライン9ページ「キ 申請書の添付書類②当該機関又は部門その他の組織が既に当該組織が分掌する事務に相当又は類似する活動をしていること(実質が備わっていること)を示す活動に係る議事録」については、いずれの適格消費者団体もその活動を許されていないため(非弁行為や訴訟信託になる)、その事務に相当又は類似する活動をしていること(実質が備わっていること)を示す活動に係る議事録は添付不可能であるから、削除するべきである。

2.特別の利害関係を有する場合

 ガイドライン20ページ「特別の利害関係を有する場合の措置その他業務の公正な実施の確保に関する措置」中、「現在及び過去2年の間に」、「①被害回復裁判手続きの相手方である事業者の役員又は職員である場合」について、例えば、過去2年の間の短期間、相手方事業者にパート等の非正規職員として雇用されていた者や定年退職した職員が、退職後、特定適格消費者団体の職員となった場合において、当該事業者と特別な利害関係を有する場合があるとはいえないから、「過去2年の間に」は削除されるべきである。

 また、同様に、「現在及び過去2年の間に」、「②当該事業者と取引関係(日常生活に必要な取引を除く。)を有している場合が該当する。」とされているが、特定適格消費者団体の役員や専門委員である個人事業主たる弁護士や司法書士等の者が、事業用として、事務所の電気、ガス、水道、携帯電話、NHKなどと供給・利用契約を締結している場合には、これらの取引が日常生活に必要な取引ではなく営業取引とされるとなると、これら事業者を相手方とする被害回復関係業務は行えないことになるため、除外される取引関係が「日常生活に必要な取引」のみでは範囲として狭過ぎる。「被害回復関係業務の公正な実施に影響を及ぼさない程度の取引」というような定め方はどうか。

3.授権契約の拒絶及び解除

 ガイドライン30ページ「ア 法第33条第1項及び第2項の「やむを得ない理由」の具体的内容」に、「授権の意思が確認できないとき」を加えてはどうか。

 例えば、夫の意思能力の有無について合理的な疑いがある場合に、妻が授権に必要な手続きを代行するような場合において、夫の意思確認ができないとして受任を拒否することができるようにすべきではないか。

4.帳簿書類の閉鎖及び保存について

 ガイドライン34ページ「ア概要」(1)で、「保存すべき帳簿書類は、各帳簿書類を各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間保存する必要がある(消費者契約法施行規則第21条第3項)。」とされ、「イ 個別事項」として(ア)乃至(サ)が掲げられているが、被害関係回復業務にあっては、共通義務確認訴訟提起前の交渉から配当の終了まで相当長期に亘る事案も想定されることや長期に亘る事案でなくとも、開始時期が事業年度末に近ければ、事件としては翌事業年度以降に跨ることになる。

 そのような事案について、各帳簿書類を各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年経過すれば順次古い帳簿から廃棄してもよいというのでは、事案が終了していない帳簿が順次廃棄されたり、順次事案の前半部分から欠落して全体像がわからない後半部分を保存したりということになる。

 しかし、実際には、事件が終了するまでは、特定適格消費者団体が事務処理を遂行するために古い帳簿も必要なため、各事業年度の末日をもって閉鎖した保存用の帳簿と同じ帳簿(こちらは閉鎖しない帳簿)を二重に作成することになるし、前半部分が欠落し全体像がわからない帳簿を保存することは意味がなく、保存コストだけがかかるなど、団体にとっては非効率的である。

 したがって、事業年度末で閉鎖することが適当である帳簿と、個別の事件記録などのように事業年度末で閉鎖するよりもむしろ事件の処理が終了したときに閉鎖するほうが適当な帳簿に区分し、事件が解決したときに閉鎖するほうが適当な帳簿にあっては、事業年度末に閉鎖するのではなく、事件終了時に閉鎖することとしてはどうか。

5.報酬及び費用等についての監督について

 ガイドライン40ページ「(4)報酬及び費用等についての監督」では、「特定適格消費者団体の報酬及び費用並びに被害回復関係業務全体の運営からみて特定適格消費者団体が過剰な報酬を目的として恣意的な事件の選定をしていないかについては、被害回復関係業務の安定的な運営及び信頼性を確保するため、十分に監督を行う必要がある。」とされている。

 被害回復関係業務は、一旦消費者に生じた被害を事後的に特定適格消費者団体の行為によって回復させるものであるところ、消費者にとっては、被害回復よりも未然に被害の防止が図られたり、既に被害が発生している場合にはその被害の拡大防止が図られたりする方が、未だ被害を受けていない消費者にとって有益である。

 特定適格消費者団体は、同時に適格消費者団体でもあるのであるから、被害回復関係業務で得られた報酬を、被害の未然防止や拡大防止のために、適格消費者団体の業務である差止請求関係業務に充てることや、セミナー開催費用や広報費用等消費者啓発事業に充てること、将来それらの費用に充てるための準備金として留保しておくことが否定されるべきものではない。

 したがって、「被害回復関係業務全体の運営からみ」るだけでは狭きに失するので、特定適格消費者団体兼適格消費者団体の全体の過去の活動実績及び現在の活動並びに将来の活動予定からみる必要がある。

 過剰な報酬目的か否かは、全体的にはその特定適格消費者団体兼適格消費者団体の受けた報酬の使途及び予定される使途との見合いで判断可能である。また、個別の事件の報酬が過剰であれば、それよりも低額の報酬でこの手続きに依らずに個別に請求する消費者側の代理人を引き受ける弁護士や司法書士が現れるであろうから、特定適格消費者団体に授権する消費者が減って、結局、特定適格消費者団体が受け取る報酬の総額は減ることになるから、そのような報酬額を定めることはない。

 過剰な報酬目的か否かは、事案の選定が適切か否かではなく、その団体の報酬の使途及び予定される使途が適切かどうかによって監督され得るものであり、現在も適格消費者団体の会計及び経理については、消費者庁が監督しているのであるから、これに加えて事案選定が適切か否かの監督を行う必要はない。

 したがって、事案選定が適切か否かの監督に関する記載は削除されるべきである。