消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

被害回復訴訟

ONE MESSAGE等に対する情報商材被害事件に関する最高裁判所の判決を受けて
~消費者裁判手続特例法の「支配性」に関する解釈について~

 当機構が、消費者裁判手続特例法(以下「特例法」という。)に基づき、虚偽または実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調した説明をして商品等を販売した売主会社及び勧誘した個人に対し、不法行為に基づき代金相当額の損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴した事件について、本日、最高裁判所において、訴えを却下した東京地方裁判所の判断及びこれを正当とした東京高等裁判所の判断は誤りであるとして、本件を東京地方裁判所に差し戻す旨の判決が言い渡された。

情報商材被害は、基本的に、同一のメールや動画によってその内容が説明され、その説明を信用して購入するところ、実際に提供された商品やサービスが、説明された内容と著しい齟齬があることから不法行為の成否が問題となり、最も重要且つ中心的な争点である勧誘の違法性が被害者に共通であることから、本件多数消費者被害は、特例法による救済に適する案件であるとして、平成31年4月に共通義務確認訴訟を提起した。しかし、事業者側から過失相殺すべき事情の存在や勧誘と被害の因果関係の有無を争われたことから、一審の東京地方裁判所、控訴審の東京高等裁判所は、過失相殺や因果関係について、個々の対象消費者ごとに個別に審理する必要があるなどとして特例法第3条4項に該当し、いわゆる支配性を欠くものとして訴えを却下していた。ちなみに、高裁判決は、令和3年12月22日である。

なお、本件の情報商材は、暗号通貨で、誰でも、簡単・確実に多額の利益が得られるこれまでにない手法を紹介するとされた「仮想通貨バイブルDVD5巻セット」(オプションとして、セミナーに参加できる権利などとして「VIPクラス」を付加することができる。価格は、概ねDVD5巻セットが約5万円、オプションと合わせると約98,000円)、その購入者に対して、人工知能があなたに代わり24時間365日お金を増やし続けるシステムの提供を中心とすると説明されている「パルテノンコース」(価格は498,000円)である。

当機構が一審及び原審の判断には誤りであるとして上告受理申立をしたところ、最高裁判所が申立てを受理し、本年2月16日に口頭弁論が開かれ、本日、判決が言い渡されたものである。

 原判決が特例法の適用範囲を著しく狭め、立法の意義を大きく減殺するものであったところ、本日の最高裁判所の判決が原判決である東京高等裁判所の判決を破棄し、第1審判決を取り消したことは、特例法の立法趣旨に適うものとして評価するものである。

 本日の最高裁判決は、法3条4項の解釈ついて「個々の消費者の対象債権の存否及び内容に関して審理判断をすることが予想される争点の多寡及び内容、当該争点に関する個々の消費者の個別の事情の共通性及び重要性、想定される審理内容等に照らして、消費者ごとに相当程度の審理を要する場合」でなければ訴えを却下することができないと判断した。その上で、本件は、そのような場合に該当しないと判断したものである。

 過失相殺や因果関係が争われるような事案においても、消費者ごとに相当程度の審理を要する場合を除いては、支配性に欠けることはなく、共通義務確認訴訟の支障にはならないことが明確に示されており、今後の特例法の活用にとって有意義な判断が示されたと考える。

 本件においては、既に提訴から相当な年月が経過していることから、早急な被害救済を図るため、差し戻し後の東京地方裁判所においては、迅速な審理・判断を求める。

2024年3月12日
特定適格消費者団体
特定非営利活動法人消費者機構日本
代表理事 副理事長 佐々木 幸孝

これまでの経過

2019年04月26日
株式会社ONE MESSAGEおよび泉忠司氏を東京地方裁判所に提訴(平成31年(ワ)第11049号)
2021年05月27日
株式会社ONE MESSAGE等に対する共通義務確認訴訟 控訴のご報告(令和3年(ネ)2677号)
2022年01月07日
株式会社ONE MESSAGE等に対する共通義務確認訴訟 控訴審判決のご報告
2024年01月15日
(株)ONE MESSEGE共通義務確認訴訟 最高裁判所で口頭弁論が行われます。