消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

申入れ・要請等

(株)かんぽ生命保険に対して、高齢の消費者の保険契約に関し、親族の同席がなく、契約内容を誤認したとして解約の申し出があった場合には応じること等を要請し、回答を受け取り、協議を終了しました。

 当機構は、消費者から、「かんぽ生命保険が親族の同席なしに高齢の親に不必要な保険を販売した」との情報提供を受け、(株)かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命」)に対して、次の対応を要請しました。

要請事項

  1. かんぽ生命が、70歳以上の消費者との間で生命保険契約を締結した際、当該消費者の親族の同席がなかった件について、当該消費者から契約内容の誤認があったとして解約の申入れがあった場合には、解約申入れに応じるとともに、当該消費者がかんぽ生命へ支払い済みの保険料相当額を、当該消費者に返還すること。
  2. 今後、かんぽ生命が70歳以上の消費者を生命保険契約に勧誘するに際しては、かんぽ生命作成の「顧客本位の業務運営に関する原則への取り組み」の原則5の(3)②③を遵守すること。

 当機構が、かんぽ生命に対して上記の2項目の対応を求めたのは、以下の①~③の理由から、かんぽ生命が親族の同席がないまま高齢の消費者に生命保険を勧誘したことは不法行為に該当する可能性があること、また、親族の同席がないために本来は必要のない保険を自分にとって必要な保険であると高齢の消費者が誤認して契約締結していた場合は、当該保険契約は錯誤に基づく意思表示として無効の可能性があると考えたことによります。

  1. ①保険契約の内容の難解さゆえ、一般的に判断能力等が低下傾向にある高齢の消費者が不必要な保険契約を締結してしまい損害が生じるおそれがあること。
  2. ②金融庁の監督指針、(一社)生命保険協会のガイドライン、かんぽ生命の勧誘方針に、高齢者に保険契約を勧誘する場合には、親族の同席を行わせることが共通認識としてあったこと。
  3. ③かんぽ生命の保険契約の勧誘につき、親族の同席に問題がある事例等が確認できたこと。

回答

 当機構はかんぽ生命と面談協議を行い、かんぽ生命から回答書を受け取りました。
当機構の要請事項に対する回答(概要)は以下のとおりですが、詳細は回答書をご確認ください。

~要請事項1について~

  1. ①回答書の「1.弊社の取り組み」の取り組みを徹底しているが、お客さまから「契約内容等に誤認があった」との申出を受けた場合には、対象契約の経過年数、保険金の支払の有無等を確認するとともに、申込み当時の事実関係を明らかにするために、お客さま及び生命保険募集人双方から申込み当時の状況を聴き取る等による確認を行っている。
    その結果、錯誤による無効として対応する場合のほか、お客さま保護の観点から、社外の弁護士の意見を踏まえ、契約成立時に遡り、払込済みの保険料を返還する取り扱いも行っている。
  2. ②他方、対象契約が申込みから相当期間が経過していたり、お客さまが契約内容を十分に理解している旨の聴き取り結果が得られている場合、あるいは入院保険金等を既に支払っている場合等には苦情申出のきっかけ、お客さまの判断能力、加入に至るまでの訪問回数、家族同席状況、訪問アプローチ、説明時間、お客さまの保険加入に対する意向、保険料負担に無理がないかなどを事案ごとに確認し、当該確認結果を踏まえ、総合的に判断したうえで、必要に応じて契約措置をする取り扱いを行っている。
    今後も、同様の申出を受けた場合には、お客さま及び生命保険募集人からの聴き取り等を行い、その結果に基づき、適切に対応していく所存である。
  3. ③なお、当社の判断に納得できず、お客さまとの間で解決に至らない場合は、中立かつ公平な審査を行う組織として社内に設置している「査定審査会」を案内している。同審査会は、社外の弁護士、医師及び消費者問題に見識のある者で構成されており、第三者的な立場で審査を行うことでお客さま保護を図っている。

~要請事項2について~

 回答書の「1.弊社の取り組み」を徹底するとともに、これらの取組みを確実に推進、遵守していくために、事業パートナーである日本郵便(株)と、全国かんぽ募集品質改善対策本部会議を設置し対応している。今後とも生命保険募集人への教育、指導を充実させる等、両社一体となって募集品質の向上に取り組み、高齢のお客さまにも十分納得いただき、真に満足いただける保険契約を販売していく。

 その他、かんぽ生命は高齢の契約者に対しては、以下をはじめとする取組みを既に行っているとのことです。

【申込時におけるご高齢者のお客様(満70歳以上)に対する家族等説明】

協議終了

 当機構は、かんぽ生命から回答を受け、協議を終了しました。

 かんぽ生命が回答(要請事項1に対する回答②)で述べていますが、顧客の判断能力、勧誘や契約締結の態様を考慮し、一定の場合に契約を無効とし、払い込み保険料を返還しているとのことですので、高齢の消費者の方で、親族の同席がなく保険の内容をよく理解しないで契約してしまったという方は、かんぽ生命まで契約の無効と払込済みの保険料の返還を申し出てみてください。

かんぽ生命コールセンター:0120-552-950
高齢者専用コールセンター:0120-744-552

関連公表

 本件(高齢の消費者に対する保険勧誘)について、当機構がかんぽ生命に要請し、協議も終盤を迎えた時点で、契約の乗り換え等に際し不適切な保険販売が横行していたことが報道され大きな社会問題となりました。この点については、本件の回答書にも「3.全てのご契約調査及び改善に向けた取り組み」として記述されています。

 本件の要請・回答とは別に、当機構は、かんぽ生命による契約の乗り換え等に際し行われた不適切な保険販売に対して抗議と意見表明を行いました。上記リンクからご確認ください。